近年、日本では人手不足の影響が深刻化する中、多くの企業で外国人労働者を雇用する動きが活発化しています。しかし、採用を検討する反面「どのように採用を進めればいいのか分からない」と不安を抱える企業も少なくありません。
本記事では、2025年度の最新情報をもとに、外国人採用を検討する企業が知っておくべき基本知識から、採用のメリットや注意点、雇用手続きまでをわかりやすく解説します。初めて外国人を採用する企業の担当者はもちろん、採用経験のある方にも役立つ内容を網羅しています。
外国人の雇用を検討しているけど何から手をつけたらいいか分からない..
はじめての外国人採用はハードルが高く感じてしまいがちです。
この記事を読めば外国人採用が理解でき、今後の指針として活用できます。
外国人採用をはじめる前に、まずは外国人労働者の直近の市場感について理解を深めましょう。この章では、公的機関の調査結果をもとに統計データをご紹介します。
厚生労働省によると、2024年10月末時点の外国人労働者数は2,302,587人(前年度比+253,912人)となり、過去最高を更新しました。ここ10年間で外国人労働者の数はおおよそ3倍に成長しています。
企業が外国人を雇用する動きは、コロナ禍で入国制限の問題が起きた際に一時的に停滞したのみで、その後は勢いを増して成長していることが分かります。この事実から、これからの企業は、国選びはもちろん外国人労働者との向き合い方が問われる時代になると予想できます。
では、外国人を雇用している事業所の数はどうでしょうか?
外国人を雇用する事業所数は、2024年10月末時点で342,087か所(前年度比+23,312か所)となり、外国人労働者数とともに過去最多を更新しています。
外国人労働者というと、工場などの裏方として働いているイメージを持つ方も多いかもしれませんが、2019年4月に特定技能制度による受け入れが開始して以降、介護や宿泊・外食業などの幅広い業種で活躍しています。
これらのデータから、外国人採用は今後も成長する市場であることが予想されており、早いうちに取り組むべき採用手法であるといえるでしょう。
外国人採用を推進している事業所の規模別では、従業員数30人未満が213,517か所(構成比:62.4%)と最も多く、30人以上100人未満が58,864か所(構成比:17.2%)という結果でした。中小企業を中心に外国人労働者を雇用する動きが広がっています。
統計の観点から外国人採用が盛り上がっていることが分かりました。次は「在留資格」について解説します。現在、日本で働いているすべての外国人は「在留資格」という資格を取得し活動しています。
在留資格(ざいりゅうしかく)とは、日本に滞在する外国人がどのような目的で在留できるかを定めた制度です。外国人が日本に滞在し、就労や学業などの活動を行うためには、適切な在留資格を取得する必要があります。
在留資格は全部で29種類存在します。その中でも「就労可能」な在留資格は大きく5つに分類することができます。
以下の表で詳しく解説しています。
専門的・技術分野の在留資格 | 特定技能 | 特定産業分野で労働者として働くための資格 |
---|---|---|
高度専門職 | 高度な学歴や職歴を持つ人材向け | |
技術・人文知識・国際業務 | エンジニア、通訳、マーケティングなど | |
企業内転勤 | 海外の関連企業からの転勤者 | |
技能 | 調理師、スポーツ指導者、宝石・貴金属加工職人など | |
介護 | 介護福祉士養成校を卒業し、介護福祉士の資格が必要 | |
教授 | 大学などの教育機関で働く | |
芸術 | 画家、作曲家など | |
宗教 | 宣教師など | |
報道 | 新聞記者、カメラマンなど | |
身分に基づく在留資格 | 永住者・定住者・配偶者等 | 身分や家族関係に基づいて付与される資格 |
技能実習 | 技能実習(育成就労) | 発展途上国の人材が技術を学ぶための制度 |
資格外活動 | 留学・家族滞在等 | 一定の条件下でアルバイトなどの労働が許可 |
特定活動 | 特定活動 | EPA・インターンシップなどケースバイケースで就労可 |
永住者や配偶者などを除くと、外国人労働者の雇用には「専門的・技術分野の在留資格」、「技能実習」、「資格外活動」、「特定活動」のいずれかの資格を持った人材を採用する必要があるということを覚えておきましょう。
「特定活動」は、法務大臣が個々の外国人に対して活動を指定して認める在留資格です。ケースごとに就労の可否が異なるため注意が必要です。
技能実習制度は2024年3月15日に閣議決定された「育成就労制度」に変わります。
現行の技能実習は「人材育成を通して国際貢献すること」を目的として掲げていますが、その実態は、実習生を教育の対象ではなく、労働力として扱っているケースが少なくありません。こうした背景から外国人が日本で持続的に働ける仕組みとして「育成就労」が新設されました。
外国人労働者の最新動向と在留資格についてご紹介しました。
国内の採用とは違い、なんだかややこしそうな外国人採用ですが、なぜここまで外国人採用が注目されているのでしょうか?
この章では、外国人採用が選ばれている背景について説明します。
外国人を雇用するメリットは以下のようなものが挙げられます。
・若手人材を積極的に雇用できる
・規模に関わらず地方でも応募が集めやすい
・確実な雇用により人事計画を立てやすい
・多文化組織による社内の活性化
・海外進出の足掛かりにつながる
特に、「若手人材を積極的に雇用できる」という点は外国人を雇用する最大の魅力の一つです。
2024年9月に総務省が発表した「統計からみた我が国の高齢者」データによれば、65歳以上の就業者数は、20年連続で増加し914万人と過去最多を記録。日本の高齢者は主要国よりも高く、就業者総数に占める65歳以上の就業者の割合は13.5%に達しています。
高齢化問題や地方の労働者不足は、今の日本では深刻な問題です。
外国人採用は「就業場所・事業規模を問わず人手不足の解消はもちろん、若手人材の確保」にも期待できます。これらの日本全体の問題を解決できる糸口の一つとして期待される取り組みが「外国人採用」であるといえます。
「年々採用が難しくなってきた」「応募がこなくなった」という問題は企業の問題だけではなく、上記のような社会情勢が影響している場合もあります。日本の人材のインフラに頼らず、「自分たちで外国人材を確保する」という人事戦略に切り替えることにより、理想的な経営に一歩近づけるかも知れません。
それでは外国人を雇用するデメリットにはどのようなものがあるでしょうか。
デメリットは以下のようなものが挙げられます。
・採用決定から入社までに時間がかかる
・文化の違いがあり、献身的なフォローが必要
・日本語レベルにより育成コストがかかる
・支援の委託によるランニングコストの発生
・外国人雇用の知識が必要
外国人採用は、日本人の雇用とは違い、「今日面接して明日から来てもらう」というようなことができません。海外在住者の場合、在留資格や各種手続きの影響もあり、入社までに約3カ月から半年程度の時間を要します。余裕を持って採用に取り組みましょう。
また、外国人労働者の視点で見ると、異国の地で働くことは文化や習慣などの違いから想像以上の負荷がかかっています。日本人の雇用とは違い、環境に慣れるまでに時間がかかることが多いため、企業側がそういった背景に配慮し、適切なサポート体制を整えておくことが重要です。
では、外国人を雇用するには具体的にどのような流れがあるのでしょうか?
外国人を雇用するまでの一般的な流れは以下の通りです。
➀求人・採用活動
➁面接・選考
③在留資格の申請
④就労準備・入国
⑤雇用開始・支援
順番に詳しく説明します。
外国人を採用するためのルートはいくつかあります。
国内に住んでいる外国人を採用する方法は以下のようなものがあります。
現地で外国人採用をする場合は以下の通りです。
登録支援機関とは「特定技能を持った外国人と、それに関わる企業」を支援する企業・団体であり、主に在留資格「特定技能」による雇用の場合に委託します。
監理団体とは「外国人技能実習生と、それに関わる企業」を支援する非営利団体です。
あわせて読みたい:監理団体の役割とは?育成就労の影響は?業務内容やポイントをまとめて解説
はじめて外国人を採用する場合であれば、特定技能なら登録支援機関へ。技能実習なら監理団体へ相談することからはじめてみましょう。どの制度で外国人を採用するか迷っている場合はJAPANNESIAの60分無料オンライン壁打ち会(問い合わせページに飛びます)をご活用ください。
外国人採用は日本人の採用とは違い専門性がとても高い採用手法です。「紹介はできるけど支援や手続きは無理」なんてことも実際にありえるため、特定技能や技能実習で外国人を採用したい=まずは登録支援機関または監理団体の資格を持った専門性の高い企業へ相談することをおすすめします。
2024年2月末時点で登録支援機関の数は9,545件、監理団体は3,749団体存在し、各々に強み・特徴が異なるため「専門性が高く透明性のある情報を公開している団体」を選びましょう。
応募者が集まったら、選考を行います。
日本在住者から応募があった場合は、在留カードと在留資格の確認をしておきましょう。
確認するべきポイントは以下の通りです。
面接では、現地側とのやり取りがあるケースが多いです。オンライン面接を活用し、通訳を同席させるなどの工夫をしましょう。選考が終了し、無事に採用が決まったら、内定書を発行し雇用契約を結びます。書類関係はすべて現地語で翻訳しておくと、後々トラブルにもならずに済みます。契約を結べたら日本で働くための手続きである「在留資格」の申請に移ります。
海外在住の外国人を雇用する場合、在留資格の申請を行います。また、国内在住の外国人でも、就職や転職に伴い在留資格の変更手続きが必要になることがあります。申請書の作成は、本人はもちろん企業側が対応しなければならないケースがあります。
あわせて読みたい:「在留資格」を日本一わかりやすく解説。ビザとの違い・種類・特徴は?
在留資格の申請には専門的な知識が求められ、不備があれば不許可となり再申請が必要になるケースも少なくありません。特定技能や技能実習生を雇う場合は、登録支援機関・監理団体・行政書士のサポートを受けることでスムーズな申請が可能です。
在留資格の取得が無事に完了したら、外国人労働者がスムーズに業務を開始できるように受け入れ準備を進めましょう。
一般的な入社までの準備物
日本の行政手続きに慣れていない外国人のために、必要な書類や手続きの流れをサポートする必要があります。在留資格によっては、事前の研修やオリエンテーションは必須とされています。定められたルールに沿って外国人が安心して働けるよう支援をしていきましょう。
登録支援機関または監理団体へ委託している場合、入社までの義務的支援も行ってくれるため安心です。
さぁ、いよいよ外国人が入社します。ここからがスタートラインといっても過言ではありません。外国人が入社するまでに国の文化や特徴についても社内理解を促進させ、外国人従業員が定着し、長く活躍できるように日常的にサポートを行うことがとても大切です。
ここまでで外国人を雇用する全体像が理解できたかと思います。しかし、外国人採用を理解するにはこれだけでは足りません。外国人の雇用は手続きや法律にも注意する必要があります。日本人採用と同じ感覚で採用活動を進めると、最悪の場合刑罰に処されることもあります。この章で事前に知っておくべき注意点を紹介します。
外国人労働者の待遇は、労働基準法に沿って日本人と同じように適用されます。2020年4月から「同一労働同一賃金制度」もスタートしました。外国人だから低賃金で雇うことができるということは決してありません。
もし、労働契約の段階でこれに反する場合、外国人が在留資格を取得できない可能性があります。
労働基準法などを犯した場合は日本人と同じように罰せられますが、外国人雇用で注意しなければいけないことが「違法滞在による雇用」です。
もし違法滞在者を雇用した場合は「不法就労助長罪」が適用され、意図があるかに関わらず3年以下の懲役もしくは 300万円以下の罰金またはその両方が科されます。
外国人を雇用するには必ず厳格なルールに沿った活動が必要であるということを覚えておきましょう。
出入国在留管理庁では、受入れ企業側が登録支援機関や組合を利用せず、自社で特定技能の管理を行うためには最低限満たすべき要件があると公表しています。
特定技能外国人を自社で支援したい場合は、2年間の支援実績と以下のような要件が必要です。
いかがだったでしょうか。
外国人採用は制度が複雑なため、最初は不明点や疑問点が多くなりがちです。JAPANNESIAでは外国人採用の全フローを0→1で丁寧に伴走支援します。
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著者プロフィール
上田 浩之
外国人雇用労務士。JICA事業でインドネシアに2度の渡航を経験。現地にて整備学校の立ち上げ・教育の責任者として従事。帰国後、インドネシアへの深い知見を活かし、JAPANNESIA株式会社を創業。