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「技能実習」から「特定技能」へ移行はできる?切替方法や注意点を外国人雇用労務士が徹底解説

代表取締役 外国人雇用労務士

上田 浩之

技能実習生が在留資格「特定技能」を取得するケースが増えてきています。
本記事では、技能実習生から特定技能へ移行する方法や注意点などを、外国人雇用労務士が紹介します。

技能実習生を受け入れている企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。


読者

技能実習から特定技能への切り替えはできるの?


上田

条件を満たせば特定技能への移行は可能です。要件や移行方法などについて解説していきます。

「技能実習」と「特定技能」の違いとは?

「技能実習」と「特定技能」はどちらも外国人が日本で働くための制度ですが、目的・対象・在留条件などが大きく異なります。以下にその違いをわかりやすくまとめました。

制度目的の違い

この2つの制度はどちらも、「外国人を受け入れる制度」として共通点がありますが、それぞれ目的が違います。技能実習が、技術を教える国際貢献という目的であるのに対し、特定技能は、企業の人手不足を解消するための労働力として外国人を受け入れます。
2つの制度の違いは、「実習生」であるか「労働者」であるかの違いです。

技能実習・・・「日本で学んで、いずれ母国に帰ってそのスキルを活かしてください」という“学び中心”の制度。
特定技能・・・「日本の人手不足を補ってくれる、即戦力の労働力がほしい」という“働き中心”の制度。

特定技能制度についてもっと詳しく知りたい方は、以下を参照ください。

【比較表】制度ごとの違い

それでは、技能実習と特定技能の各項目ごとの違いを比較してみましょう。

特定技能 技能実習
目的 人材不足の解消(労働力) 国際貢献
受け入れ国 原則自由 15カ国のみ
在留期間 通算で最長5年(更新要) 3~5年
日本語レベル 日本語試験の合格(N4相当) 特に定め無し(介護のみN4相当の要件あり)
転職・転籍 不可

特定技能1号では、在留資格が期間ごとの更新手続きをすると、最長5年間在留することができます。期間中に特定技能2号を取得すれば、在留期間は無期限とされ長期的な労働力として人材を確保することが可能です。

特定技能1号と2号の違いについても補足

在留資格「特定技能」は大きく1号と2号に分類されます。
技能実習生からの移行の場合、まずは特定技能1号の在留資格を取得する必要があります。

特定技能1号 特定技能2号
産業分野 介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業 ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業
在留期間 上限5年 上限なし
更新 1年・6カ月・4カ月ごと 3年・1年・6カ月ごと
技能水準 技能実習を良好に終えている、特定技能1号評価試験を合格 特定技能2号評価試験を合格および監督者として一定の実務経験を積んでいる
日本語レベル 試験結果の証明が必要(日本語能力試験N4以上) 試験の証明不要
支援の有無 支援計画に基づいた生活の支援が必須 不要
家族帯同 原則認められない 要件を満たせば可(配偶者・子)
転職・転籍

1号と2号の違いは、1号で外国人材を教育・育成し、特定技能2号へとステップアップした外国人材を、長期的に確保するというイメージです。

「技能実習」から「特定技能」への移行条件

在留資格「特定技能」を取得する条件は、基本的に特定技能評価試験(日本語能力試験と技能試験)の合格です。
ただし、「技能実習」からの移行の場合は、条件を満たすと「試験の免除」が認められるパターンがあります。

移行できる対象者とは

「技能実習」から「特定技能」への移行ができる対象者は、

・技能実習2号を良好に修了していること
・対象職種・作業内容など特定技能1号の業務に関連性していること

となります。「良好な終了」とは、下記のような意味合いが含まれます。

ポイント

「良好な終了」とは
・技能実習を2年10か月以上修了した者(技能実習1号を「1年」修了し、技能実習2号を「1年10月以上」修了した者)
・技能検定3級、若しくはこれに相当する技能実習評価試験(専門級)の実技試験の合格者、又は実習実施者等が作成した技能実習の実習状況を評価した文書(評価調書)等により、出勤状況や技能の修得状況等を総合的に考慮し、欠勤がないなど、良好に実習を修了した者をいいます。

特定技能評価試験を免除できる条件

特定技能評価試験の免除には、「技能実習2号を良好に修了し、かつ作業内容に関連性が認められる場合」に適用できます。

仮に、技能実習で取り組んだ作業内容と異なる業務に就労する際は、日本語能力試験のみ免除され、技能試験の合格が必要となります。

「技能実習」から「特定技能」の移行手続きの流れ

「技能実習2号」から「特定技能」へ移行させる手続きの流れを紹介します。

特定技能への移行フロー

移行手続きの流れは以下の通りです。

➀特定技能外国人と企業が雇用契約を締結
➁特定技能外国人の支援計画を策定
③事前ガイダンスの実施、健康診断の受診
④在留資格変更許可申請を出入国在留管理庁に申請

基本的には、雇用契約を締結し、各種書類を出入国在留管理庁へ提出することで移行手続きが完了します。

移行手続きの必要書類

特定技能外国人を受け入れるための必要書類は、以下の書類が必要です。

・在留審査申請書(在留資格認定証明書交付申請書)
・技能実習修了証明書
・雇用契約書
・申請人の能力や状況を提示する書類
・税金・年金・健康保険関係の書類
・雇用企業に関する必要書類
・支援関係の書類
・産業分野別に関する必要書類

必要書類などの詳細は、以下のURLで確認できます。

■在留資格認定証明書交付申請書の一覧
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/specifiedskilledworker.html
■在留資格認定証明書交付申請書と様式V
https://www.moj.go.jp/isa/content/930003872.pdf
■社会保険料の納付記録交付申請書
https://www.nenkin.go.jp/service/tokuteiginou/syoruikouhu.html
■産業分野別の書類
https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri07_00201.html

企業側に必要な対応(義務的支援)

「技能実習2号」から「特定技能1号」へ移行した外国人材には、受け入れ企業(特定技能所属機関)に対し職場、日常生活、社会上の支援等を行う「義務的支援」が義務付けられています。

この支援は、「登録支援機関」と呼ばれる機関へ委託することができ、全体の8割の企業が支援を委託しているといわれています。

登録支援機関については以下の記事を参考にしてください。

「技能実習」から「特定技能」に移行するメリットと注意点

移行するメリット

技能実習から特定技能へ移行するメリットは以下の通りです。

・在留期間を延長できる
・労働力として扱える

技能実習生として会社で育ててきた人材を、「労働力」として中長期で確保することができます。
また、産業によっては業務の範囲が広がり、即戦力として扱えますので、日本人を新規で採用する場合などと比較しても継続して働いてもらう方が企業にとってメリットが大きいといえるでしょう。

移行するデメリット・注意点

特定技能へと移行するには「メリット」だけではありません。

・賃金が技能実習よりも高くなる
・支援・手続きに手間がかかる

特定技能は、技能実習より上の在留資格であり、「経験者」として雇用する必要があります。日本人と同等以上の賃金設定が求められますので、必然的に給与は高くなります。
また、移行に関する各種手続きの複雑さや継続的な支援業務を負担に感じる企業も少なくありません。

そしてなにより、技能実習生自身が特定技能への移行を望んでいるのかということは気にしておくべきポイントでしょう。

まとめ|スムーズに移行するために知っておきたいサポート制度

いかがだったでしょうか。
技能実習からの移行には、
・技能実習2号を良好に修了していること
・対象職種・作業内容など特定技能1号の業務に関連性していること
が必要であり、特定技能1号には「義務的支援」も求められます。

技能実習から特定技能への移行にお困りの際は、登録支援機関であるJAPANNESIAにご相談をしてください。

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著者プロフィール

JAPANNESIA株式会社
代表取締役 外国人雇用労務士

上田 浩之

外国人雇用労務士。JICA事業でインドネシアに2度の渡航を経験。現地にて整備学校の立ち上げ・教育の責任者として従事。帰国後、インドネシアへの深い知見を活かし、JAPANNESIA株式会社を創業。

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