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「特定技能評価試験」とは?業界ごとの取得要件などをわかりやすく解説

代表取締役 外国人雇用労務士

上田 浩之

特定技能評価試験とは、外国人が日本で「特定技能」の在留資格を取得するために受ける必要がある試験です。
この試験に合格し、必要な条件を満たした外国人は「特定技能外国人」として日本で働くことができ、企業はその外国人を正式に雇用することができます。この仕組み全体を「特定技能制度」と呼びます。

本記事では、「特定技能評価試験」に関する基本的な知識から・業界ごとの受験先まで外国人雇用労務士がわかりやすく解説します。
これから外国人材の採用を検討している企業の方は、ぜひ参考にしてください。


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特定技能評価試験ってどんな試験なの?


上田

特定技能評価試験は業界ごとに異なります。本記事を読んで特定技能試験について理解を深めましょう。

外国人が在留資格「特定技能」を取得するには2つのパターンがある

特定技能評価試験を解説する前に、外国人が在留資格「特定技能」の1号を取得するための要件について知っておきましょう。外国人が特定技能1号を取得したい場合は、以下の2つのどちらかを満たさなければいけません。

【海外在籍の場合】各業界ごとに定められた特定技能評価試験の合格
【国内在籍の場合】技能実習2号からの在留資格変更(要件を満たせば特定技能評価試験が免除)

基本として、外国人が、在留資格「特定技能」を取得するためには「特定技能評価試験」に合格する必要があります。ただし、既に国内に在籍し、「技能実習2号」を良好に修了した技能実習生に関しては、業務の関連性が認められる場合に限り試験が免除されます。(移行に伴い分野が異なる場合は技能試験の合格が必要)

外国人が、これらの要件のどちらか一方を満たすことで、在留資格「特定技能」を取得できます。
在留資格「特定技能」(特定技能制度)についての全体像など、もう少し詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてください。

また、企業が海外の現地から新たに特定技能外国人を採用したい場合、採用できるのは「特定技能1号」を取得した外国人に限られます
そして、海外に在籍している外国人が「特定技能1号」を取得するためには、「特定技能評価試験」に合格することが必須条件です。

つまり、海外から特定技能外国人として日本で活動するためには、この試験の合格が第一歩となります。

それでは、「特定技能評価試験」とはどのような内容なのか?
次の章で詳しく解説していきます。

特定技能評価試験とは

特定技能評価試験とは?

特定技能評価試験とは、外国人材の「日本語能力」および「技能レベル」の水準を評価する試験のことです。
海外現地に在籍している外国人が、在留資格「特定技能」の1号を取得するには、以下の2つの特定技能試験に合格する必要があります。

日本語試験・・・国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)または日本語能力試験(JLPT)
技能試験・・・各業界ごとの団体が実施する技能を評価する試験

前述した通り、国内に在籍しており、かつ技能実習2号を良好に修了した外国人については、これらの試験が免除される場合もあります。

また、特定技能評価試験は職種ごとに実施団体が異なります。
そのため、希望する業種や職種に応じて、それぞれの試験を受ける必要があります。

さらに、在留資格「特定技能1号」をすでに持っている外国人が、より長く働ける「特定技能2号」へ移行する場合には、技能に関する試験(技能試験)に合格することが条件です。
この場合、日本語の試験は必要ありません。

業界ごとの特定技能評価試験について

特定技能試験は業界ごとに管轄する省庁・団体が異なる

特定技能評価試験には「日本語試験」と「技能試験」の2つがあるということをお伝えしました。
ここで注意したいポイントは、特定技能評価試験は1つの団体がまとめて管理しているわけではなく、各業界ごとに管轄する省庁・団体が異なるということです。

外国人が在留資格「特定技能」を取得する場合は、活動する業種にあわせて各団体の試験を受ける必要があります。
それでは、業界ごとの特定技能評価試験について解説します。

【比較表】業界別の特定技能評価試験の試験

出入国在留管理庁の「特定技能ガイドブック」によると、外国人が在留資格「特定技能」の1号を取得するためには、業界ごとに定められた以下の特定技能評価試験に合格しなければいけません。

業界別の特定技能評価試験の一覧

業界分野 日本語試験 技能試験
介護 国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4レベル以上)
加えて介護日本語評価試験
介護技能評価試験
ビルクリーニング 国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4レベル以上) ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験
工業系製造業 国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4レベル以上) 製造分野特定技能1号評価試験
建設業 国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4レベル以上) 建設分野特定技能1号評価試験等
造船・船用工業 国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4レベル以上) 造船・舶用工業分野特定技能1号試験等
自動車整備業 国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4レベル以上) 自動車整備分野特定技能評価試験等
航空業 国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4レベル以上) 特定技能評価試験(航空分野:空港グランドハンドリング、航空機整備)
宿泊業 国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4レベル以上) 宿泊業技能測定試験
農業 国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4レベル以上) 農業技能測定試験(耕種農業全般、畜産農業全般)
漁業 国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4レベル以上) 漁業技能測定試験(漁業、養殖業)
飲食料品製造業 国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4レベル以上) 飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験
外食業 国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験(N4レベル以上) 外食業特定技能1号技能測定試験

特定技能評価試験のうち、日本語試験においては共通して国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)または日本語能力試験(JLPT)の合格が必須項目となります。
介護分野に関しては、+αで「介護日本語評価試験」の合格が必要です。

技能試験に関しては、業界ごとに管轄する省庁・団体が異なりますので、以下の一覧表を参考にしてください。

【表】業界別の技能試験の主催・URL

日本語試験は特定技能1号を取得する場合のみ必要ですが、外国人が在留資格「特定技能」の1号、2号を取得する場合は、どちらも各業界の技能試験に合格する必要があります。

業界分野 実施団体 団体URL
介護 厚生労働省 介護技能評価試験:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_000117702.html
ビルクリーニング 全国メンテナンス協会 ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験:https://www.j-bma.or.jp/qualification-training/zairyu
工業系製造業 経済産業省 製造分野特定技能1号評価試験:https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/gaikokujinzai/index.html
建設業 建設技能人材機構 建設分野特定技能1号評価試験等:https://jac-skill.or.jp/exam.html
造船・船用工業 日本海事協会 造船・舶用工業分野特定技能1号試験等:http://www.classnk.or.jp/hp/ja/authentication/evaluation/index.html
自動車整備業 日本自動車整備振興会連合会 自動車整備分野特定技能評価試験等:https://www.jaspa.or.jp/mechanic/specific-skill/index.html
航空業 日本航空技術協会 特定技能評価試験(航空分野:空港グランドハンドリング、航空機整備):https://www.jaea.or.jp/
宿泊業 宿泊業技能試験センター 宿泊業技能測定試験:https://caipt.or.jp/
農業 全国農業会議所 農業技能測定試験(耕種農業全般、畜産農業全般):https://asat-nca.jp/
漁業 大日本水産会 漁業技能測定試験(漁業、養殖業):https://suisankai.or.jp/
飲食料品製造業 外国人食品産業技能評価機構 飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験:https://otaff.or.jp/
外食業 外国人食品産業技能評価機構 外食業特定技能1号技能測定試験:https://otaff.or.jp/

外国人が在留資格「特定技能」を取得するには、こうした各省庁・団体が開催している技能試験に合格しなければいけません。
特定技能外国人は、このような一定水準の技能を第三者機関から担保されたうえで入国するため、受け入れ企業側も戦力として人材を迎えやすいというメリットがあります。

日本語試験(JFT-Basic・JLPT)について

外国人が、在留資格「特定技能」の1号を取得するためには、技能試験と日本語試験の合格が必要となることをお伝えしました。

日本語評価試験は、業界ごとに運営団体が異なる技能試験と違い、国際交流基金(JFT-Basic・JLPT)が開催する試験での合格が必要となります。

【表】日本語試験の取得要件・URL

日本語試験の実施団体や合格基準を以下の表にまとめましたので参考にしてください。

実施団体 特定技能1号の取得要件 団体URL
国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic) JFT-BasicのA2レベル以上 https://www.jpf.go.jp/jft-basic
日本語能力試験(JLPT) N4レベル以上 https://www.jlpt.jp
介護日本語評価試験(介護のみ) 問題の総得点の60%以上で合格 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_000117702.html

外国人が「特定技能1号」の在留資格を取得するためには日本語試験のうち、JFT-BasicであればA2以上、JLPTであればN4以上の合格が条件となります。
※介護の職種のみ、日本語試験(JFT-BasicまたはJLPT)に加え、介護日本語評価試験への合格が必要です。

国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)・日本語能力試験(JLPT)の違いとは

この2つの日本語試験は、同じ国際交流基金が運営する「日本語能力を測るための試験」ですが、試験の内容はそれぞれ異なります。この章で日本語試験の違いについて見ていきましょう。

国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)の場合

まずはJFT-Basicについて解説していきます。

参考:日本語基礎テスト(JFT-Basic)サンプル問題

JFT-Basicの特徴
JFT-Basicは、生活場面などの日常会話などの幅広い場面を想定した総合的なテストで、特に「会話や読解力」を重視する傾向があります。日常生活を送るうえで、日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力があるかどうかを判断します。

JFT-Basicの試験実施方法
コンピュータベーステスト(CBT方式)と呼ばれる60分間の試験方式で、試験終了と同時に合否が発表されます。

JFT-Basicのレベル
A1、A2、B1、B2、C1、C2の6段階

在留資格「特定技能」1号の合格レベル
A2以上で合格

JFT-Basicの実施頻度
プロメトリック予約ウェブサイト 開催日程表(日本国内で受験する場合)
プロメトリック予約ウェブサイト 開催日程表(日本国外で受験する場合)
引用:国際交流基金日本語基礎テスト「よくある質問

日本語能力試験(JLPT)の場合

次にJLPTについて見ていきましょう。

日本語能力試験「N4レベルの問題例」

JLPTの特徴
JFT-Basicは、就職や進学などでも利用される信頼性の高い日本語試験です。JFT-Basicが「読解力」などを重視したテストであるのに対し、JLPTは総合的な日本語能力が問われる試験となります。

JLPTの試験実施方法
筆記試験(マークシート方式)

JLPTのレベル
N5~N1の5段階(N1が最も難しい)

在留資格「特定技能」1号の合格レベル
N4以上で合格

JLPTの実施頻度
年2回(7月・12月)
日本語能力試験「試験の実施と結果通知」:https://www.jlpt.jp/guideline/testsections.html

ポイント

2つの日本語試験ですが、JFT-Basicのほうが受験機会も多く、即合否の結果が分かることから、在留資格「特定技能」1号の要件として使われやすいです。

試験を合格した特定技能外国人のレベルはどれくらい?

これまで説明してきたとおり、外国人が「特定技能」の在留資格を取得するためには、特定技能評価試験(日本語試験・技能試験を合格する必要があることをお伝えしました。

特定技能評価試験に合格した外国人は、業務に必要な基本的な知識・技術を持ち、一定の日本語コミュニケーション力もあるため、戦力として活躍できる可能性が高い人材と言えるでしょう。

ただし、注意点もあります。
日本語能力試験N4レベルは、簡単な単語やフレーズの理解はできるものの、会話力はまだ発展途上です。そのため、受け入れ後も継続的な日本語教育やサポートが必要になります。

今後、ますます特定技能外国人の数はさらに増えていくと予想されています。
採用を検討している企業は、特定技能外国人の能力や条件を正しく理解し、受け入れ体制をしっかり整えることが大切です。

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著者プロフィール

JAPANNESIA株式会社
代表取締役 外国人雇用労務士

上田 浩之

外国人雇用労務士。JICA事業でインドネシアに2度の渡航を経験。現地にて整備学校の立ち上げ・教育の責任者として従事。帰国後、インドネシアへの深い知見を活かし、JAPANNESIA株式会社を創業。

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