監理団体とは、在留資格「技能実習」で入国した外国人技能実習生を受け入れる企業(実習実施者)を支援・監督する非営利団体です。
技能実習制度は、2024年6月に可決成立した「育成就労」へと移行します。
本記事では、監理団体とは何か、具体的な業務内容をはじめ、技能実習制度の代わりに新設された育成就労制度での影響について詳しく解説します。
監理団体って聞いたことはあるけど、なにをする団体なの?
監理団体は、技能実習生および受け入れ企業に対して様々なサポートを実施する非営利団体です。この記事で監理団体の全貌について学んでいきましょう。
監理団体とは、技能実習生の現地募集や受け入れに必要な各種手続き・受け入れ企業への指導や監査を行う非営利団体です。監理団体は、主務大臣(法務大臣、厚生労働大臣)によって認められた組織であり、企業と実習生の間に立ち、法令遵守・適切な実習環境の確保を目的として活動しています。
監理団体が果たす役割は以下のようなものがあります。
簡単に言えば、技能実習制度に関わるAtoZを監理団体が担う役割を果たします。
それでは監理団体がサポートする技能実習制度について理解を深めていきましょう。
監理団体が密に関わる技能実習制度(在留資格「技能実習」)とは、日本の企業や団体が、開発途上国の人々に対して日本の技術・技能・知識を習得させることを目的として1993年に創設された制度です。創設された理由は、発展途上国の経済発展に貢献することを目的とした「国際貢献」の一環とされています。
技能実習制度は、発展途上国の人材が日本で実務を通じて技術を習得し、母国の発展に貢献することを目的としています。技能実習制度は「1号 → 2号 → 3号」とステップアップしていき、それぞれの役割が異なります。
在留資格「技能実習」 | 滞在期間 | 役割 |
---|---|---|
技能実習1号(1年目) | 最長1年 | 技能実習の導入段階。主に日本の職場環境や基礎的な技能を学ぶ期間 |
技能実習2号(2年目~3年目) | 最長2年(1号と合わせて3年間) | 1号で学んだ技能を活かし、より実践的な業務に携わる。 |
技能実習3号(4年目~5年目) | 最長2年(1号から通算で5年間) | 2号で学んだ技能をさらに高度化し、指導的な立場で実務を実施 |
また、技能実習生は、技能実習1号から更新する毎に、「技能検定」に合格する必要があります。また、3号へ進めるのは優良な受け入れ機関(企業や監理団体)のみであり、技能検定2級(または同等の試験)を受験しなければ取得できません。
受け入れ企業・団体が技能実習生を受け入れるには大きく2つのパターンがあります。
企業単独型・・・受け入れ企業自らが、海外現地で直接、技能実習生を迎え受け入れる方法。
団体監理型・・・監理団体が海外現地の教育機関と連携するなどして技能実習生を募集し、受け入れを希望する企業へ技能実習を行う方法
「団体監理型」で技能実習生を受け入れる際は、任意の監理団体に加盟する必要があります。
JITCO(公益財団法人国際人材協力機構)に記載されている「外国人技能実習制度とは」によると、2023年の末時点では、98.3%が団体管理型での受け入れ方法を採用しており、技能実習生を受け入れる場合のほとんどのケースで「監理団体」へ依頼しているということになります。
監理団体がサポートに携わる技能実習制度ですが、2027年までに育成就労制度へと移行されることが確定しています。
育成就労制度とは、2024年3月15日に閣議決定された新たな「労働力」を目的とした外国人雇用制度です。従来の「実習生」を目的とした技能実習制度は廃止され、2027年6月20日までに育成就労制度へと切り替わる予定です。「廃止」という強い言葉が使われていますが、その実態は制度の変更であるといっても過言ではないでしょう。
育成就労制度が新設されることで、従来の制度内容や監理団体にも影響があります。
技能実習制度に関わる各種支援をしてきた「監理団体」は、「監理支援機関」へと変わり、外部監査人の設置を義務付けるなど許可要件を厳格化する予定です。また、名称の変更に伴い現在の「監理団体」は、再申請が必要になります。
技能実習 | 育成就労 | |
---|---|---|
名称変更 | 監理団体 | 監理支援機関 |
在留資格 | 技能実習 | 育成就労 |
目的 | 技能の実習・社会貢献 | 特定技能1号水準の技能を有する「労働」を目的とした人材育成」 |
在留期間 | 1~3号を通算最長5年 | 原則3年 |
転職・転籍 | 原則不可 | 可能(要件あり) |
対象分野 | 90職種(165作業) | 特定産業分野に限定される(予定) |
可能な活動 | 細かく限定的 | 特定技能制度と同じで、幅広い |
受け入れ人数 | 上限なし | 上限あり |
日本語能力 | 要件なし(介護のみ日本語能力試験N4) | 原則A1(日本語能力試験N5) |
それでは、なぜ技能実習制度が廃止され、育成就労制度が新設されたのでしょうか?
監理団体は、2024年2月末時点で3,749団体存在しています。日本全国に監理団体が多く存在していますが、団体のなかには、悪質な監理団体が一部存在することも事実です。
外国人労働者は「人身売買」などとネットニュースでもたびたび揶揄されるケース(数字が取れるため)がありますが、それらの多くは在留資格「技能実習」で入国した外国人と一部の監理団体が不法行為を犯していることによるものです。
実際に、不法行為による監理団体の取り消しは、ほぼ毎月のように発生しており、団体の中には実態のないペーパー団体も存在するといわれています。
特に、技能実習生に多額の借金を背負わせて入国させるなど、企業・団体が組織単位で行うことも事例として存在し、法務省が発表した令和5年度の「犯罪白書」によると、ベトナム人の窃盗罪などで捕まる件数が最も高い事実もあります。
また、技能実習制度には資格取得の要件が低く、技能実習生の日本語能力が低かったり、失踪したりするリスクがあります。
このように技能実習制度自体が、時代にそぐわない面があり国はこれらの問題を解決するために「育成就労制度」を新設しました。
それでは監理団体を選ぶ際にはどのようなことを意識すると良いでしょうか。
技能実習生を受け入れる企業にとっては監理団体はいわば「パートナー」のようなものです。以下で監理団体を選ぶ注意点について解説します。
これは監理団体に限った話ではありませんが、登録支援機関や監理団体には「名ばかり団体」が一定数存在します。専門性を謳っているにも関わらず、実態は何も支援をしてくれないといった事例もあるため、複数の団体から比較することをおすすめします。
監理団体は非営利団体ですが、費用は全く異なります。団体によっては「外国人から紹介料をもらい企業側には、ほぼ無料で人材を入国させる」といった悪質な団体も過去に見受けられました。
委託費をできるだけ下げたいのは十分に分かりますが、価格だけではなく、実態と照らし合わせて判断することが大切です。
監理団体は非営利団体であり、外国人技能実習生の不正入国や差別を防ぐため、技能実習生の受け入れの際に営業行為を行うことが禁止されています。もし、監理団体から営業があった場合はその監理団体を疑うことからはじめましょう。
受け入れを希望する国への専門性がある監理団体を選びましょう。国選びに悩まれている方は下の記事が参考になります。
いかがだったでしょうか。監理団体は、技能実習制度で技能実習生の受け入れを成功させるうえで重要な役割を担っている団体です。指導や監査をしっかりと行ってくれる監理団体を選ぶことが大切です。
新設される育成就労制度の影響もあるため、これから監理団体を通して技能実習生を受け入れる企業は動向にも注目していきましょう。
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著者プロフィール
上田 浩之
外国人雇用労務士。JICA事業でインドネシアに2度の渡航を経験。現地にて整備学校の立ち上げ・教育の責任者として従事。帰国後、インドネシアへの深い知見を活かし、JAPANNESIA株式会社を創業。