登録支援機関とは、在留資格「特定技能1号」で外国人を雇用する際に、企業に変わって外国人の支援業務を行う企業団体のことです。
外国人を雇用するにあたり、似た団体として「監理団体」というものがありますが、特定技能と監理団体は全く別の役割があります。
本記事では、はじめての方にも分かりやすく登録支援機関の役割や違いについて網羅的に解説します。
登録支援機関ってどんな支援をしてくれる機関なの?
登録支援機関は、在留資格「特定技能」で受け入れた特定技能外国人材の支援を実施してくれる機関です。この記事で登録支援機関について学んでいきましょう。
登録支援機関は、特定技能1号で外国人を雇用する際、受け入れ企業(特定技能所属機関)から委託を受け、代わりに特定技能1号外国人の支援を実施する企業や団体です。
在留資格「特定技能」は1号と2号に分類されますが、そのうちの特定技能1号で外国人を雇用する場合には、特定技能所属機関に対し職場、日常生活、社会上の支援等を行うことが義務付けられています。
特定技能外国人の支援は、専門的な知識が必要になるケースが多く、時間・労力的にも特定技能所属機関が自分たちで支援を行っていくことは難しい場合が多いです。
そこで「登録支援機関」に支援を委託することで、専門的な支援を委託することができます。
特定技能1号として外国人を受け入れる企業等には、「支援計画」を作成し、入国から帰国まで一連のサポートを行うことなどが求められます。サポートについては「登録支援機関」に委託することもできます。
引用元:外務省「登録支援機関について」
「自分でもできるけど多くの企業は委託する」という点で例えるなら、「士業」に委託するケースと似ているかもしれません。(特定技能外国人を自社支援する場合、2年以上の中長期在留者の受入れ実績が必要です)
実際、特定技能外国人を受け入れた約8割の企業が登録支援機関へ委託しているといわれています。
※参考:出入国在留管理庁「外国人材受入支援体制の強化事業」事業報告書 ~概要版~」
それでは、監理団体とはどのような団体なのでしょうか。
監理団体とは、在留資格「技能実習」で受け入れた外国人(技能実習生)および受け入れ先の企業・団体に対し支援・監査を行う非営利団体です。
登録支援機関と監理団体の違いは下記の表をご覧ください。
登録支援機関 | 監理団体 | |
---|---|---|
管轄 | 出入国在留管理庁 | 外国人技能実習機構 |
該当在留資格 | 特定技能「特定技能1号」 | 技能実習 |
役割 | 特定技能外国人の支援を請け負う企業・団体 | 技能実習生の受け入れの支援・受け入れ企業への監査 |
主な業務内容 | 義務的支援:事前ガイダンス・出入国の送迎・住居確保
生活に必要な契約支援・生活オリエンテーション・公的手続等への同行・日本語学習の機会の提供・相談・苦情への対応・日本人との交流促進・転職支援(人員整理等の場合)・定期的な面談・行政機関への通報 その他付随する任意的支援 |
採用サポート・書類作成・定期監査・臨時監査・訪問指導・その他付随するサポート業務 |
登録支援機関と監理団体は管轄も違い、役割が異なります。
一番の違いは、受け入れ予定の外国人の在留資格が「特定技能」か「技能実習」であるかという点です。特定技能外国人の受け入れを検討しているなら登録支援機関へ、技能実習なら監理団体へ相談してみると良いでしょう。
在留資格「特定技能」とは、2019年4月に新設された「労働力の解消」を目的とした制度のことです。これにより外国人を「労働者」として正式に取り扱うことができるようになりました。特定技能は特に労働力が不足している12分野(旧14分野)で活用でき、今後は16分野まで拡大する予定です。
以下に、特定技能外国人を雇うことができる産業をまとめました。
介護、ビルクリーニング、工業製品製造業(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野)、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業
特定技能は「労働力」として活動する資格であるため、「実習」としての技能実習とは目的が異なります。技能実習よりも求められる要件が高く設定されていることが特徴です。特定技能の要件は、業種によって異なりますが「日本語能力」と「取得分野の技能」に関する試験に合格する必要があります。
受け入れる企業にとっては、試験を合格した一定水準の人材を確保することができるメリットがあります。
登録支援機関が実施する支援内容は大きく分けて2つあります。
2つの支援について詳しく見ていきましょう。
受け入れ企業(特定技能所属機関)は、特定技能外国人が日本で充実した生活を送れるよう「義務的支援」を実施しなければいけません。
ただし、義務的支援は特定技能1号の外国人が対象となり、特定技能2号の外国人には義務とされていません。もし、義務的支援に不履行がある場合は、定められた支援を受けずに労働に準じている=「不法就労を助長している」とみなされ、「不法就労助長罪」に該当する可能性があります。違反すると、意図に関わらず最大で3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される非常に重い刑であるため必ず義務的支援は行いましょう。
任意的支援とは、特定技能外国人が日本での生活や就労を円滑に行えるように、受け入れ企業(特定技能所属機関)または登録支援機関が自主的に提供する支援のことです。
法令で義務付けられている「義務的支援」とは異なり、提供するかどうかは登録支援機関の裁量に委ねられています。
多くの場合、義務的支援は特定技能外国人を雇用するうえでの最低ラインです。
任意的支援の実施は義務ではありませんが、特定技能外国人の定着や企業の採用競争力向上に大きく貢献します。登録支援機関を選ぶ際は、義務的な支援にとどまらず、長期的な視点で専門性のあるサポートを実施してくれる機関を選びましょう。
義務的支援には10項目の支援が存在します。
各義務的支援において、定められている支援内容に沿って実施を行いましょう。
受け入れ企業は、特定技能外国人が在留資格を申請する前に、日本での仕事や生活について説明する必要があります。これを「事前ガイダンス」と呼びます。
事前ガイダンスは、書面や文章だけでの説明は認められておらず、電話、対面、またはビデオ通話を使って3時間以上の説明を行う必要があります。さらに、特定技能外国人が十分に理解できる言語で説明することが義務付けられていますので、現地語を話せる通訳者などがいれば安心です。
「事前ガイダンス」
・雇用契約締結後,在留資格認定証明書交付申請前又は在留資格変更許可申請前に、労働条
件・活動内容・入国手続・保証金徴収の有無等について、対面・テレビ電話等で説明
引用:出入国在留管理庁「特定技能外国人受け入れる際のポイント」
事前ガイダンス実施後は、規定の書類に特定技能外国人のサインと説明者のサインを記入し、出入国在留管理庁に提出する必要があります。
・日本での労働条件(給与、勤務時間、業務内容など)
・生活環境(住居、公共交通機関、医療、銀行手続きなど)
・社会保障制度(健康保険、年金制度など)
・在留資格に関する重要事項(更新手続き、違反時の対応など)
・相談や苦情の受付窓口の体制と連絡先
・支援担当者の氏名、連絡先(メールアドレス等)
・その他、付随する任意説明
特定技能外国人が日本に入国する際や、出国時の港や空港へ向かう際には受け入れ企業の送迎が必要です。また、出国時は送迎だけでなく、保安検査場の前まで同行し入場まで見届ける必要があります。
・入国時に空港等と事業所又は住居への送迎
・帰国時に空港の保安検査場までの送迎・同行
海外から新たに入国する特定技能外国人は、住居の確保や携帯電話・銀行口座の開設が困難であるため、特定技能所属機関が支援する必要があります。また、住居確保には特定技能外国人1人あたり7.5㎡以上が必要です。
・連帯保証人になる・社宅を提供する等
・銀行口座等の開設・携帯電話やライフラインの契約等を案内・各手続の補助
特定技能外国人が日本で日常生活が送れるよう、「生活オリエンテーション」を実施する義務があります。
・円滑に社会生活を営めるよう日本のルールやマナーの説明
・公共機関の利用方法
・連絡先・災害時の対応等の説明
国や地方行政機関への届出・手続きをする場合は支援者が同行し、手続き全般のサポートをしなければなりません。
・必要に応じ住居地・社会保障・税などの手続の同行
・書類作成の補助
特定技能外国人に対し、業務上または日常生活上で必要な日本語学習の機会を提供する必要があります。
・日本語教室等の入学案内
・日本語学習教材の情報提供等
特定技能外国人から相談や苦情があった際は、対策や指導を行う必要があります。職場での契約違反や労働違反が行われた際には、地方出入国在留管理局、労働基準監督署等への機関へ同行し解決に至るサポートが必要です。
・職場や生活上の相談・苦情等の窓口
・外国人が十分に理解することができる言語での応対
・内容に応じて必要な助言,指導等
日本文化に触れるなど、特定技能外国人が日本人と交流できる環境を提供しなければいけません。
・自治会等の地域住民との交流の場の提供
・地域のお祭りなどの行事の案内や参加の補助等
企業側の都合により、特定技能外国人との雇用契約が解除される場合には、次の転職先を探す必要があります。
・受入れ側の都合により雇用契約を解除する場合の転職先を探すサポート
・推薦状の作成等、求職活動を行うための有給休暇の付与や必要な行政手続の情報の提供
支援担当者は、特定技能外国人と定期的に面談を実施し労働関連の法令違反が確認された場合は、労働基準監督署や関係行政機関へ通報しなければなりません。
・支援責任者等が外国人及びその上司等と定期的(3か月に1回以上)に面談
・労働基準法違反等があれば通報などの措置
登録支援機関の数は2024年2月末時点で全国に9,545件存在しますが、それぞれ特徴が異なります。
登録支援機関を選ぶポイントは以下の通りです。
まずは受け入れ予定の国へ対応しているかどうかを確認する必要があります。
例えば、JAPANNESIAではインドネシア人を専門としていますので、他の国へは対応していません。ベトナム人を雇用したい場合は、ベトナムを取り扱っている登録支援機関へ相談する必要があります。
また、登録支援機関のなかには「現地語を話せるスタッフが在籍している」ことを専門性として謳っているケースがありますが、雇用後におきるトラブルの根本的な原因は、国特有の文化や環境の違いによるものが割と多いです。しっかりと特定技能外国人をサポートしていくという点で、専門性の高い登録支援機関を選ぶことをおすすめします。
企業が特定技能外国人を受け入れる本質的な目的は、短期的な「人材確保」だけではなく、中長期の人材育成および人事戦略に基づいた実行のはずです。
「日本語レベルが高い」「若い人材が豊富」などはただの枝葉に過ぎず、外国人を中長期で雇用することは、十分なサポート体制のうえに成り立ちます。登録支援機関を選ぶ場合は、しっかりとした支援をしてくれるかどうか、「特定技能外国人が安心して業務に取り組めるサポート体制があるかどうか」を一緒に考えてくれるような登録支援機関を探しましょう。
登録支援機関は営利目的で運営されています。機関によって、提供するサービスの品質や価格が異なります。1人あたり25,000円のところもあれば50,000円のところもあります。
ここで注意したいことは提供サービスと価格の妥当性です。
「できるだけ安価な登録支援機関を選ぼう」ということではなく「安物買いの銭失い」にならないよう、「ROI(費用対効果)」の観点から自社の目的に沿った適切な登録支援機関を選ぶ必要があります。
「登録支援機関の支援に不満がある」という事態が起きないようしっかりと信頼できる機関へ委託しましょう。
いかがだったでしょうか。
登録支援機関は、特定技能外国人の雇用を成功させるうえで重要な役割を担っている機関です。同じ目線で外国人雇用を成功させるために伴走してくれるような機関を探しましょう。
登録支援機関選びで迷っている場合はJAPANNESIAの60分無料オンライン壁打ち会(問い合わせページに飛びます)をご活用ください。
著者プロフィール
上田 浩之
外国人雇用労務士。JICA事業でインドネシアに2度の渡航を経験。現地にて整備学校の立ち上げ・教育の責任者として従事。帰国後、インドネシアへの深い知見を活かし、JAPANNESIA株式会社を創業。