外国人労働者のなかでもインドネシアは、外国人労働者の増加率において首位に位置する注目の国です。
この記事では、国内企業がインドネシア人を雇用する際に押さえておくべき注意点について、インドネシア専門の登録支援機関であるJAPANNESIAが解説します。
「インドネシア人材の採用」を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
インドネシア人を雇用する際にはどんなことに注意が必要?
インドネシア人を雇用する際は、インドネシア政府が管理する労働市場情報システムなどへの手続きも必要になります。外国人雇用労務士である私が、詳しく紹介します。
まずは、インドネシア人材に関連する国内の最新動向から増加している背景についてご紹介します。
厚生労働省が発表した「外国人雇用状況」の届出状況まとめ等を参考にインドネシア人材の傾向をまとめました。
(1)国籍別増加率・・・2022・2023年に1位、2024年は2位と急成長
(2)対応産業・・・・・ベトナム人材が得意とする産業に加え、医療・福祉業などで活躍
(3)在留資格別・・・・労働者数の内訳のうち「特定技能」の構成比が25.8%と最も高い
特に国籍別の増加率においては、直近3年間においてトレンド型に成長を遂げています。新規で外国人を受け入れたい企業から選ばれているということもありますが、受け入れ実績がある熟練した企業からも選ばれており、外国人材市場の全体を通してインドネシアという国が注目されていることが分かります。
国内企業からインドネシア人が選ばれている理由はいくつかあります。資料や実体験を元に理由をまとめます。
(1)特定技能制度で入国する場合は、試験の合格が必要
(2)コロナ禍以降、医療・介護分野などで外国人採用需要が拡大
(3)インドネシアの人柄・文化が日本の価値観とマッチ
従来、外国人労働者の代名詞ともいえる「技能実習制度」などは、入国の目的が「実習」になるため、外国人側に入国の要件が求められてきませんでした。そのため、良くも悪くも「会社に入ってからトラブルを抱える」といった問題が後を絶たなかったのです。
しかし、2019年に新たに創設された特定技能制度では、外国人を正式に「労働力」として扱うため、原則として特定技能評価試験(日本語能力試験、技能評価試験)の合格が必要となりました。
本制度により、外国人側にも一定水準の技能が求められるようになったことに加え、活躍できる業種の幅も広がりました。
このような背景から、特定技能外国人を雇う企業も多くなっており、インドネシアは、労働者数の内訳のうち「特定技能」の構成割合が25.8%と、最も高い傾向にあることから、「実力が伴う人材」として企業から選ばれています。
外国人労働者の数は、年々増加しています。今まで外国人材に注目していなかった産業でも、雇用する動きが拡大しています。なかでも「医療・介護」分野は顕著に表れているといえるでしょう。
福祉施設の利用者と高度な会話が行われる分野において、その実務を得意とする外国人材は現状限られており、その一つがインドネシアであるといえます。現地の教育機関でも「医療・介護」を専門に扱う学校も増えており、今後ますますインドネシア人材が活躍することが予想されます。
最後は、インドネシア人材の国民性・人柄です。イギリスのチャリティー機関「チャリティーズ・エイド・ファンデーション」が発表した「World Giving Index(世界人助け指数)2024」によれば、インドネシアは世界人助け指数を7年連続で1位を獲得しています。
JAPANNESIAの実経験からも、インドネシア人を受け入れた企業からの評価が良く、リピート率も非常に高いと感じています。
インドネシア人についてもっと詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてください。
インドネシア人を日本で雇用する際には、まず最初に「どの在留資格で働いてもらうのか」を明確にする必要があります。就労が認められている在留資格は限られており、国内在住者の雇用の場合は、在留カードの確認と、雇用までの正しい手続きを理解することが重要です。
外国人を雇用する前に、以下のポイントを在留カードで必ず確認しましょう。
就労制限の有無
・「就労可」:就労に制限なし(例:永住者、日本人の配偶者など)
・「資格外活動許可」:留学生や家族滞在などで、アルバイト等の範囲に限る
・「就労不可」:雇用できない(もしくは許可が必要)
特に多くの企業が対象とするのは、以下のような就労が認められた在留資格です:
インドネシア人の多くが「特定技能1号」の在留資格で来日しています。現地から特定技能外国人を雇用する際には、国際的な手続きが必要となります。
インドネシアでは、政府公認の送り出し機関(P3MI)またはIPKOL(特定技能海外求人プラットフォーム)を通じてのみ人材紹介が可能です。企業が勝手に個人と契約を結ぶことはできません。
一般的に、特定技能外国人の受け入れは以下のような流れで進めていきます。
特定技能1号の外国人を雇用する際、企業には以下のような義務的支援業務が10項目義務付けられています。
これらの支援業務は、登録支援機関に委託することができます。
多くの企業は、支援実績のある外部機関と提携して対応しています。
外国人は在留資格で取得した業種でしか活動することができません。国内在住者を採用する際は、必ず在留カードを確認しましょう。また、不法滞在者を雇用した場合には、雇用側にも「不法就労助長罪」が適用され、3年以下の懲役もしくは 300万円以下の罰金またはその両方が科される場合があります。
外国人にも同じく労働基準法が適用されます。当たり前ですが、労働契約の段階でこれに反する場合は、外国人が在留資格を取得できない可能性もあるため注意が必要です。
これはインドネシアに限った話ではありませんが、特定技能外国人には義務的支援の実施が義務付けられています。受け入れの際には、登録支援機関に委託するか・入社後の支援まで実行できる管理体制の整備が求められます。
インドネシア人の多くはイスラム教徒(ムスリム)であり、信仰度合いにもよりますが、生活の中に宗教的な価値観や文化的背景が反映されています。職場環境においてもこれらに対する理解と配慮が不可欠です。対応を誤ると、本人のモチベーション低下や退職につながるリスクもあるため、注意が必要です。
外国人材を受け入れても、定着しなければ意味がありません。特に、日本語能力がまだ未熟なうちは、コミュニケーションがうまくとれないため会社とのギャップも必然的に生まれやすいです。こうした側面にも配慮し、育成環境の充実化や福利厚生などのサポートなど、受け入れ体制の事前準備をしっかりと行うことで採用ROIの向上につながります。
いかがだったでしょうか。インドネシア人の雇用には、在留資格などの法的側面や宗教・文化の違いなどに注意が必要だということをお伝えしました。これからますますインドネシア人材は増加していきます。最終的に「信頼され、定着する」職場づくりへといまから進めていきましょう。
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著者プロフィール
上田 浩之
外国人雇用労務士。JICA事業でインドネシアに2度の渡航を経験。現地にて整備学校の立ち上げ・教育の責任者として従事。帰国後、インドネシアへの深い知見を活かし、JAPANNESIA株式会社を創業。