外国人の新たな受け入れとして「特定技能制度」を活用した人材採用を考える企業が年々増加しています。しかし、多くの担当者が最初に直面するのが「結局、いくらかかるのか?」というコスト面の不透明さです。
初期費用は?支援機関への委託費は毎月いくら?給与相場は?――こうした疑問が積み重なり、導入の判断に踏み切れないという声も少なくありません。
本記事では、特定技能人材の受け入れにかかる費用の「相場感」をわかりやすく解説しつつ、採用パターン別の違いやコスト構成、さらにはコスト削減の工夫まで、企業担当者が知っておくべき情報を網羅的にご紹介します。
「高いのか安いのか分からない」「あとから追加で費用が発生するのでは…」と不安を感じている方は、ぜひこの記事を通して判断材料を手にしてください。
特定技能外国人の受け入れにはどの程度のコストがかかるの?
本記事で、特定技能受け入れ費用の相場について解説していきます。
特定技能人材の受け入れには、「初期費用」と「月々の運用コスト」が発生します。
さらに、採用する方法(国外採用/国内採用/技能実習生からの移行)や、業種(建設・介護・製造など)によっても費用に差が出てきます。
まずは、各パターンごとの代表的な費用感を一覧表で押さえておきましょう。これを見ることで、自社に合った採用ルートの選定や、予算感の見当をつけやすくなります。
採用パターン | トータル費用の目安 | ランニングコスト |
---|---|---|
現地採用 | 約40〜110万円(理論年収の15%~30%) | 約3〜4万円 |
国内在住者の採用(留学生・転職など) | 約22〜44万円 | 約2〜4万円 |
技能実習生からの移行 | 約10〜20万円 | 約2〜4万円 |
建設業(分野特化) | 上記+年会費24万円+負担金月1.25〜2万円 | 約4〜6万円 |
トータル費用には、紹介手数料・在留資格申請・渡航費・住居準備・健康診断などの最終的な支払金額の目安を記載し、ランニングコストは、登録支援機関への委託費やサポート費用などにかかる費用を概算として記載しました。建設業では、特定技能外国人を受け入れる場合、別途特定技能協議会への加盟義務が発生し、費用も割高となります。また、ランニングコストは支援を登録支援機関に委託しない場合(2年以上の中長期在留者の受入れ実績が必要)、削減が可能です。
人材紹介会社や送り出し機関を通じて採用する場合にかかる費用です。
金額は採用元(現地採用 or 国内採用)、紹介元(民間業者 or 公的機関)、人数などによって変動します。
・現地採用の場合:30〜60万円 / 人 が相場
・国内在住者採用:10〜30万円程度が多い
・技能実習生からの移行:紹介手数料ゼロの場合も
現地採用の場合は、紹介会社に加え、送り出し機関への手数料も発生するため、費用は高めに設定されます。また、既に自社で活動している技能実習生からの移行に関しては、新たに紹介手数料が発生する場合は少ないケースが多いです。
「特定技能」ビザを新たに申請・取得するための費用です。これに加え、在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請の手数料、4,000円(収入印紙代)と返信用封筒切手代392円がかかります。行政書士といった専門家が申請を補佐・代行するケースが一般的で、申請手数料がかかります。
・新規申請(国外人材):15〜20万円程度
・資格変更(国内人材):10〜15万円が相場
・更新申請:3〜8万円程度/回
自社で申請する場合は、コストを大幅に抑えられますが、在留資格の申請には手間と制度理解が必要です。
特定技能外国人1号には、入社後も義務的支援などの支援義務を行う必要があります。実際、特定技能外国人を受け入れた約8割の企業がこれらの支援業務を登録支援機関へ委託しているといわれています。
本項目の委託費は、日本語や生活支援、相談対応など、外国人労働者を受け入れるうえで必要な支援業務を外部機関に委託するための費用を指していますが、委託は任意です。自社支援の条件をクリアし、「支援計画を全て実施する体制」が整っている企業に関しては、委託費が発生することはありません。
現地採用にて外国人材を採用する場合、飛行機代や一時的な宿泊施設費、住居の保証金・敷金礼金が必要です。
・航空券代:片道5〜10万円程度(国による)
・住居準備費:敷金・礼金含め20万円前後
現地採用の場合、渡航費用や住居に関する初期費用は原則「企業負担」が望ましいですが、国内採用の場合なども含め、本人負担で合意する場合もあります。
家具や家電の手配、携帯電話等の申込手続きなど企業が用意するケースが一般的ですが、代行会社に委託する場合は別途委託費用が必要です。
特定技能制度は「指定14分野」に限定されていますが、分野によって受け入れ条件やコスト、求められる支援内容に大きな違いがあります。
ここでは、企業の受け入れが特に多い 建設・製造・介護 の3業種を中心に、それぞれの特徴を解説します。
企業が物件の賃貸契約者となり、外国人本人に部屋を貸し出す方式です。敷金・礼金・仲介料・保証料は企業側が全額負担し、月々の家賃は「実費相当額」で徴収します。外国人本人に代わって契約を行うため、言語面・契約交渉の負担が軽く、トラブルが少ないのがメリットです。
一方、企業が借主であるため、原状回復責任や管理コストが発生する点には注意が必要です。
特定技能人材の受け入れには一定の費用がかかりますが、採用ルートの選び方や支援体制の工夫次第で、数十万円単位のコストダウンが可能です。
ここでは、実際に企業が活用している「費用を抑える5つの方法」をご紹介します。
最も代表的かつ効果的なコスト削減法です。すでに日本に在留している技能実習生が、特定技能に「移行」する形で採用されるため、
初期費用は10〜20万円程度で済むケースが多く、実務力も期待できます。
現在在籍している外国人スタッフの知人・友人紹介による採用です。
仲介業者を通さないため、紹介手数料が無料または大幅に割安に。
信頼関係のある人材が集まりやすく、定着率も高まる傾向。
行政書士手数料・申請代行料・研修費などは、人数が増えると単価が下がるケースが多くあります。
同時採用により、事務手続き・教育コストのスケールメリットを活かせます。
ここまでで、特定技能人材にかかる費用感とコスト削減についての説明をしましたが、実際のところ安ければよいという考えで委託先を安易に決めることはおすすめしません。
なぜなら、企業が行う外国人採用の目的は短期的なコスト削減ではなく、企業人事に係る採用ROIの向上だからです。実経験からも全体のバランスを見て費用対効果に見合うか否かを判断することが大切といえます。
いかがだったでしょうか。特定技能人材の受け入れにかかる費用は決して安くはありませんが、長期的な視点で見れば、安定した労働力確保への投資とも言えます。
だからこそ、受け入れ前にしっかりと相場を把握し、自社に合った採用ルートと支援体制を設計することが重要です。
「今いくらかかるか」だけでなく、「誰を、どこから、どう迎え入れるか」まで戦略的に考えることで、費用対効果の高い外国人雇用が実現できます。
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著者プロフィール
上田 浩之
外国人雇用労務士。JICA事業でインドネシアに2度の渡航を経験。現地にて整備学校の立ち上げ・教育の責任者として従事。帰国後、インドネシアへの深い知見を活かし、JAPANNESIA株式会社を創業。