国内の介護人材が不足する現代において、いま最も注目されている手法が在留資格「特定技能」による外国人採用です。
本記事では、特定技能「介護」を取得するための概要や比較、最新の制度改正情報などをわかりやすく解説します。
外国人として日本で介護職を目指す方や、外国人材の受け入れを検討する介護施設の皆さまにとって、有益な情報をまとめています。
うちも外国人を雇用したいけど、特定技能「介護」ってどんな制度なの?
特定技能「介護」は、日本語能力と介護技能を持つ外国人を、介護業務に従事させることができる在留資格です。2025年4月には訪問介護も解禁されました。本記事で、基礎知識や最新の動向について詳しく解説します。
特定技能制度は、日本の深刻な人手不足に対応するため、2019年4月に創設された外国人労働者向けの在留資格です。外国人はいずれも「在留資格」と呼ばれる資格内容に基づいて活動を行っています。
特定技能には以下の2種類があります。
特定技能1号 | 特定技能2号 | |
---|---|---|
産業分野 | 介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業 | ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業 |
在留期間 | 上限5年 | 上限なし |
更新 | 法務大臣が個々に指定する期間(1年を超えない範囲) | 3年・1年または6カ月ごと |
技能水準 | 技能実習を良好に終えている、特定技能1号評価試験を合格 | 特定技能2号評価試験を合格および監督者として一定の実務経験を積んでいる |
日本語レベル | 試験結果の証明が必要(日本語能力試験N4以上) | 試験の証明不要 |
支援の有無 | 支援計画に基づいた生活の支援が必須 | 不要 |
家族帯同 | 原則認められない | 要件を満たせば可(配偶者・子) |
転職・転籍 | 可 | 可 |
特定技能「介護」は、特定技能制度のなかでも唯一「人対人」で利用者のケアに従事できる分野であり、入国する外国人側にも言語能力・文化理解が特に求められます。
介護施設で特定技能外国人を雇う場合には、特定技能「介護」の在留資格を取得した外国人でなければいけません。
特定技能「介護」以外にも、介護施設などで外国人介護士を受け入れることができる制度があります。
1.特定技能「介護」
2.技能実習(介護)
3.EPA
4.介護福祉士
それぞれの受け入れ制度の違いについては以下の比較表をご覧ください。
比較項目 | 特定技能「介護」 | 技能実習(介護) | EPA | 介護福祉士 |
---|---|---|---|---|
目的 | 即戦力として働くため | 技術移転 | 資格取得・母国への還元 | 国家資格取得と定着 |
滞在期間 | 最大5年(2号は無期限) | 原則3年(最大5年) | 最長4年(国家試験失敗で帰国) | 永住可(資格取得後) |
日本語要件 | JLPT N4+介護日本語評価試験 | JLPT N4相当 | JLPT N3相当 | JLPT N1相当が望ましい |
試験有無 | 技能試験・日本語試験あり | なし(監理団体の教育) | 国家試験(介護福祉士)受験義務 | 国家試験あり |
業務範囲 | 基本的な介護業務 | 限定的な実務 | 基本的な介護業務 | 制限なし(指導・計画等可) |
訪問介護への従事 | 可能(2025年から条件付き) | 不可 | 不可 | 可能 |
各制度のなかでも、特定技能「介護」は、国家資格を必要とせずに比較的早く現場に入れることができ、業務範囲も基本的な介護業務全般を行えるため、受け入れ企業と外国人の双方にとって、最も選ばれている制度であるといえます。
公益財団法人介護労働安定センターの「令和5年度「介護労働実態調査」結果の概要について」によると、訪問介護員に関して「大いに不足」「不足」「やや不足」の合計が約8割、また「大いに不足」「不足」だけでも約6割に達しているといわれています。
このような背景を受けて、2025年4月より、特定技能「介護」・技能実習の外国人でも、所定の条件を満たせば訪問介護業務へ正式に従事できるようになりました。
訪問介護で従事できる要件としては、利用者・家族へ事前に説明を行うとともに、 介護職員初任者研修の修了、キャリアアップ計画の策定、各OJTや研修体制整備などが義務付けられます。(特定技能の場合は+α義務的支援も必要)
※ 介護事業所等での実務経験が1年以上あることが原則とします。
(1) 外国人介護人材に対し、訪問介護等の業務の基本事項等に関する研修を行うこと
(2) 外国人介護人材が訪問介護等の業務に従事する際、一定期間、責任者等が同行する等により必要な訓練を行うこと
(3) 外国人介護人材に対し、訪問介護等における業務の内容等について丁寧に説明を行いその意向等を確認しつつ、キャリアアップ計画を作成すること
(4) ハラスメント防止のために相談窓口の設置等の必要な措置を講ずること
(5) 外国人介護人材が訪問介護等の業務に従事する現場において不測の事態が発生した場合等に適切な対応を行うことができるよう、 情報通信技術の活用を含めた必要な環境整備を行うこと
引用:厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について」
訪問介護分野では、受け入れ体制の事前準備が必要になりますが、外国人介護士が業界の主流となる未来の可能性が高いため、いまから人材の受け入れ準備を進めても良いでしょう。
特定技能「介護」の概要が理解できたところで、受け入れのメリットとデメリットについて解説します。
技能実習やEPAの制度と違い、特定技能「介護」では入国前の段階で日本語試験+技能試験の合格が求められます。医療・福祉分野での特定技能「介護」の受け入れは最も多く、全体の17.6%を占めています。学生や実習生ではなく、技量が伴う外国人材が業界に求められていることが分かります。
人口15,000人の小さな町で、0から特定技能介護士を採用した介護事業所の事例インタビューもお役立てください。
特定技能「介護」で受け入れた外国人介護士は、条件次第で夜勤や訪問介護などを含む基本的な介護業務全般に従事させることが可能です。
現在、特定技能「介護」の取得を目指す外国人材は最も多く、応募も集まりやすい傾向にあります。例えば、介護福祉士を取得した外国人などは、母数が非常に少ないため採用も困難かつ複数人数の選考ができません。母数が多いということは選考時点で複数の応募者からよりポテンシャルのある人材を選定できるというメリットがあります。
特定技能「介護」で受け入れた外国人介護士には、義務的支援と呼ばれる継続的なサポートが義務付けられています。受け入れ企業の約8割は登録支援機関に支援を委託しており、委託費が毎月のランニングコストで発生します。
将来的には、介護福祉士を取りたいという外国人は非常に多いです。受け入れ側がこうした彼らのキャリアに向き合える体制がなければ転職されてしまうリスクが高まるため、持続的なサポートが必要です。
いかがだったでしょうか。特定技能「介護」は、技量を伴った労働力として今後ますます増加することが予想されます。はじめて受け入れを検討している方は、外国人を採用すると利用者から反発があるのではないかと不安に思うでしょうが、私たちの経験上そのようなケースは非常に少なく、むしろ歓迎されるケースが多いです。
特定技能「介護」での受け入れを成功させるためには、人材紹介会社と登録支援機関との連携がかかせません。外国人介護士の受け入れを検討している方は、登録支援機関であるJAPANNESIAに一度ご相談ください。
外国人の雇用を検討されている方は、JAPANNESIAの60分無料オンライン壁打ち会をご活用ください。
著者プロフィール
上田 浩之
外国人雇用労務士。JICA事業でインドネシアに2度の渡航を経験。現地にて整備学校の立ち上げ・教育の責任者として従事。帰国後、インドネシアへの深い知見を活かし、JAPANNESIA株式会社を創業。