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特定技能外国人の住居確保はどうする?住居の基準や支援内容などを徹底解説!

代表取締役 外国人雇用労務士

上田 浩之

外国人材の受け入れが進む中、とくに注目を集めているのが「特定技能」制度。しかし、採用・配属準備だけでなく、生活支援まで対応が求められるのをご存じでしょうか?
なかでも【住居の確保】は、企業や登録支援機関にとって大きなハードルのひとつです。

「どんな物件を選べばいい?」「家賃や保証人の扱いは?」「初期費用の負担ルールは?」といった疑問を抱える担当者も多いはず。

この記事では、特定技能外国人の住居確保に関する最新のルール・基準・支援の方法をわかりやすく整理。初めて受け入れる企業でもスムーズに対応できるよう、実務で押さえておくべきポイントを徹底解説します。


読者

特定技能外国人の住居確保は企業側でしなければいけないの?


上田

外国人の住居確保には、ルールが明確化されており受け入れ企業の義務にもされています。本記事で詳しく解説します。

1. 特定技能外国人の住居基準・ルールは?

法務省の「1号特定技能外国人支援計画の基準について」によると、特定技能外国人を受け入れる企業や登録支援機関には、出入国在留管理庁が定める住居に関する基準を守る義務があります。生活の安定を支えるために、居住環境の「広さ」「安全性」「契約形態」などに関して明確なルールが設けられています。

1-1. 居室の広さ:原則「1人7.5㎡以上」

特定技能1号の外国人に提供される住居は、1人あたり7.5㎡以上(約4.5畳以上)の基準を満たす必要があります。これはプライバシーや最低限の生活スペースを確保する目的でルール化されたものです。

複数名でのルームシェアも可能ですが、それぞれが基準以上の面積を確保できるようにしなければなりません。ただし、「技能実習2号」から移行した人材など、条件付きで4.5㎡以上が許容されるケースもあります(例外的扱い)。

1-2. ロフトや収納スペースは面積に含めない

天井の高さが140cm未満のロフト部分や収納スペースなどは、「居室」とはみなされず、住居面積に含めることはできません。表面的な延べ床面積だけで判断せず、「実際に居住に使用できる空間」で判断する必要があります。

1-3. 家賃設定:利益の上乗せする行為は禁止

企業が物件を借り上げて外国人に提供する場合、家賃は実費相当額のみ徴収が可能となります。利益を上乗せした家賃請求は制度上違反となり、不適切な受け入れと判断される可能性があります。企業所有の社宅を提供する場合も、建設費や耐用年数を考慮した「合理的な額」にとどめなければなりません。

1-4. 初期費用(敷金・礼金・仲介手数料)は企業負担が原則

企業または登録支援機関が住居を契約する場合、敷金・礼金・仲介料・保証料などの初期費用は企業側が全額負担することが求められます。外国人本人に対し、これらの費用を上乗せして徴収する行為は禁止されています。
一方で、外国人本人が物件を契約する場合は、本人負担でもOKですが、企業側が補助することも可能です。

1-5. 保証人対応:企業が連帯保証または保証会社を活用

外国人が自力で契約する場合、保証人の確保が難しいケースが多くあります。
そのような場合には、当該外国人の連帯保証人になることや当該外国人に代わって賃借人となるなどの適切な住居の確保のための支援を行うことが求められます。

2. 特定技能外国人の住居確保支援の方法とは?

特定技能外国人を受け入れる企業や登録支援機関には、出入国在留管理庁が定める「義務的支援」のひとつとして、住居の確保支援が求められています。
単に物件を紹介するだけでなく、契約・保証・生活立ち上げまでを含む、実務的かつ多面的なサポートが必要です。以下では、代表的な支援方法を3つに分けて紹介します。

2-1. 企業が住居を借りて提供する方法

企業が物件の賃貸契約者となり、外国人本人に部屋を貸し出す方式です。敷金・礼金・仲介料・保証料は企業側が全額負担し、月々の家賃は「実費相当額」で徴収します。外国人本人に代わって契約を行うため、言語面・契約交渉の負担が軽く、トラブルが少ないのがメリットです。
一方、企業が借主であるため、原状回復責任や管理コストが発生する点には注意が必要です。

ポイント

この支援が向いているケース
・はじめて特定技能を受け入れる企業
・地方で外国人が自力で物件を探すのが難しい場合

2-2. 企業所有の社宅・寮を提供する

次に紹介するのは、自社が保有する物件(社宅や寮)を住居として提供する方法です。建物自体の保有コストや耐用年数を考慮した合理的な家賃設定が必要です。ただし、実費以上の家賃設定(利益目的)は禁止とされています。また、共用設備(キッチン・トイレ等)の利用ルールや衛生管理には多言語対応などの配慮が必要です。

ポイント

この支援が向いているケース
・既存の社宅や空き寮を活用したい企業
・人数の多い一括受け入れがある場合

2-3. 本人が住居を契約する際の支援

最後に、外国人本人が住居を自ら探し、賃貸契約を結ぶサポートを実施する方法です。例えば、企業や支援機関は以下のような支援を提供する必要があります:

  • 不動産会社の紹介・同行
  • 契約書の説明や翻訳サポート
  • 緊急連絡先・連帯保証人の確保
  • 家具・家電・インフラの初期整備支援

この方法では、初期費用や家賃は基本的に本人負担ですが、企業が一部を補助することも可能です。

ポイント

この支援が向いているケース
・都市部などで外国人向け物件の選択肢が多い場合
・既に日本で生活経験がある外国人の場合

2-4. その他:家具・家電・生活インフラの整備支援

住居が決まっても、すぐに生活を始められる状態であるとは限りません。以下の支援も、制度上「望ましい支援内容」として推奨されています。

  • ・冷蔵庫、洗濯機、ベッドなどの基本的な生活用品の提供または案内
  • ・水道・電気・ガス・インターネットの開通支援
  • ・ゴミ出し、近隣ルールなどの生活マナー指導

2-5. 登録支援機関の活用も有効

住居確保支援は専門知識と実務ノウハウが求められるため、登録支援機関へ委託をし、安全に進めてもらうことも有力な選択肢です。特に、初めて受け入れる企業やリソースが限られる中小企業にとっては、支援の質とスピードを確保するために非常に有効です。

3. 特定技能外国人の住居に関する届出・届け出期限

特定技能外国人を受け入れる際は、住居の確保だけでなく、各種の行政手続き・届出も確実に行う必要があります。これを怠ると、外国人本人の在留資格に影響を及ぼす可能性があるため、企業や支援機関としても責任を持ってサポートしなければなりません。以下に、住居に関連する主要な届け出事項とその期限を整理します。

3-1. 転入届(住民登録)

期限:新しい住所に住み始めた日から14日以内(原則)

外国人本人が、日本国内で新たに住所を定めた場合は、14日以内に市区町村役所で「転入届」を提出する必要があります。これは「住民基本台帳法」に基づく義務であり、遅延・未提出があると、在留資格の取消し対象になることもあります。

  • ・パスポート
  • ・在留カード
  • ・賃貸契約書(または住居証明)
  • ・転入届出書(役所で記入)

※一部自治体では「住み始めた日」ではなく「住所を定めた日から90日以内」と案内されることもありますが、入管では14日を基本ルールとしています。

3-2. 在留カードの記載事項変更届

期限:新住所に移転後14日以内

住民登録とあわせて、在留カードの住所欄を最新の内容に更新する必要があります。こちらも14日以内の手続きが原則です。手続きは、市区町村役所の窓口で「転入届」と一緒に行えます。

3-3. 生活支援記録や支援実施状況の届出(企業・支援機関側)

登録支援機関または受け入れ企業には、支援内容の実施状況を記録・報告する義務があります。届出自体に明確な期限はありませんが、定期的に支援実績として記録・提出できるよう管理する必要があります。特に住居支援においては、「提供方法」「家賃」「契約形態」などを支援計画に沿って証明できる書類を保存しておくことが重要です。

4. よくある注意点とミス

住居確保に際して、よくある注意点やミスは以下の通りです。

  • ・外国人本人に任せきりにしてしまい、「届出がなされていない」まま数週間経過するケース。
  • ・賃貸契約日=入居日と誤認し、届け出期限を勘違いしてしまう。
  • ・市区町村の窓口対応に慣れていない外国人が書類不備で再訪を求められ、手続きが遅延。

このようなトラブルを防ぐためにも、企業側が手続きに同行する、もしくは登録支援機関に確実に任せることが推奨されます。

ポイント

企業が注意するべきポイント
・利益を得ず、適正価格での家賃設定を行うこと。
・住居提供方法によって初期費用負担の責任範囲が異なるため、手順の明確化と対外国人への説明が必須
・契約名義(企業or本人)によって管理の容易さやリスクが変わるため、自社の状況に応じた選択が重要

まとめ

いかがだったでしょうか。住居が確保できても、住民登録や在留カード更新といった法的手続きが完了していなければ、外国人本人が法的に適正な状態で日本に滞在できなくなってしまいます。
企業・支援機関としては、単なる書類手続きと軽視せず、「生活支援の一環」として積極的にサポートする姿勢が求められます。

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著者プロフィール

JAPANNESIA株式会社
代表取締役 外国人雇用労務士

上田 浩之

外国人雇用労務士。JICA事業でインドネシアに2度の渡航を経験。現地にて整備学校の立ち上げ・教育の責任者として従事。帰国後、インドネシアへの深い知見を活かし、JAPANNESIA株式会社を創業。

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